退職金の税金ってどうやって計算するの?

退職金とは、退職時に会社から支払われる一時的な賃金で退職手当や退職慰労金とも呼ばれます。退職金を受け取る際には税金がかかる場合がありますが、退職金には税負担を軽減するための特別な計算方法が適用されます。

退職金の税金はどのように計算されるでしょうか。簡単に基本的な仕組みを説明いたします。

退職金の計算は通常の給与とは異なり、「退職所得」として課税される「分離課税」として、所得税・住民税を計算します。

なお、今回の計算では、復興特別所得税(2.1%)は考慮いたしません。

「分離課税」の場合、給与所得である給与や雑所得である年金などと別に計算されます。退職金は、人生で1回または数回しか受け取らないため、税負担を軽減するための特別な計算がされるのです。具体的には、退職金から退職所得控除を差し引くのですが、勤続年数が長いほど控除額が多くなります。差し引いた金額から2分の1に減額し、「課税退職所得金額」として計算し、所得税・住民税が計算されます。

「退職所得控除」とは、

● 勤続年数が20年以下の場合:40万円 × 勤続年数(最低80万円)

● 勤続年数が20年を超える場合:800万円+70万円 ×(勤続年数ー20年)

で計算されます。

■退職金にかかる税金の計算方法

「課税退職所得金額」は、以下の式で算出します。

課税退職所得金額(1000円未満切り捨て)=(退職金ー退職所得控除額)÷ 2

この課税退職所得金額に応じて、税率と控除額が適用されます。

所得税額

課税退職所得金額税率控除額
1,000円 から 1,949,000円まで5%0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円 以上45%4,796,000円

住民税額:課税退職所得金額 × 10%(一律適用)

■令和5年12月に内閣官房内閣人事局が発表した「退職手当の支給状況」によると、国家公務員が定年まで勤めた場合の退職金平均額は2,112万円です。

勤続年数38年のケースで、退職金2,122万円の税額をシミュレーションしてみましょう。 退職所得控除:800万円+70万円 ×(38年ー20年)=2,060万円

課税退職所得金額:(2,122万円−2,060万円)÷ 2=31万円

税額表に当てはめて計算すると、所得税と住民税はそれぞれ以下の税額になります。

所得税:31万円×5%=15,500円

住民税:31万円×10%=31,000円

所得税と住民税の両方で46,500円となります。

この様に退職金は、税負担を軽減するための特別な計算がされるのです。

■「退職所得の受給に関する申告書」を提出する。

退職金を受け取る際、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しない場合、一律20.42%の所得税が源泉徴収されます。 退職金2,122万円の場合には、2,122万円×20.42%なので、4,333,124円が税金として引かれてしまいますので注意してください。

なお、確定申告書に退職金を記載して提出すれば、ちゃんと還付金として受け取ることができますのでご安心下さいませ。

■退職時期の調整

家賃収入がある人や退職後に個人で事業を始めようとする場合などは、退職金を受け取るタイミングを調整することによって税金を軽減できるかもしれません。

■退職金と相続税の関係

死亡後に受け取る退職金は、所得税ではなく相続税の対象です。ただし、すべての金額に相続税がかかるわけではなく、次の計算式で非課税枠が設定されています。

500万円 × 法定相続人の数=非課税枠

例えば、法定相続人が配偶者と子2人の計3人のケースでは、500万円 × 3人 = 1500万円まで非課税となり、それを超える部分に対して相続税が課されます。

まとめ

〇退職金とは、退職時に会社から支払われるもので、税負担を軽減するための特別な計算方法が適用される。

〇国家公務員が定年退職でもらう平均額2,112万円で勤続年数38年のケースでは、所得税と住民税の両方で46,500円となる。

〇「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出する。

〇死亡後に受け取る退職金は、相続税の対象になる。

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