設備投資を行ったとき、「これは一括で経費にできるのか、それとも減価償却が必要か」と迷うことは多いのではないでしょうか。
通常、10万円を超える資産は固定資産として計上し、耐用年数に応じて減価償却を行います。しかし、中小企業や個人事業主には、一定の要件を満たすことで取得年度に全額を経費処理できる特例があります。それが「中小企業者等の少額減価償却資産の特例」です。
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制度の概要
この特例は、青色申告を行っている中小企業者または個人事業主が対象です。
次の3つの要件を満たす場合に適用できます。
- 青色申告をしていること
- 1資産あたりの取得価額が30万円未満であること
- その年(事業年度)の合計額が300万円までであること
これらを満たせば、本来は数年にわたって減価償却する資産でも、取得した年度に全額を損金または必要経費に算入できます。
なお、30万円未満の判定は経理方式によって異なります。税込経理を採用している場合は税込金額、税抜経理の場合は税抜金額で判定します。
制度の根拠は、法人の場合は租税特別措置法第67条の5、個人の場合は租税特別措置法第28条の2に定められています。現在は令和8年3月31日までの取得分が対象とされています。
通常の減価償却との違い
通常の減価償却では、例えば20万円のパソコンを購入した場合でも、耐用年数に応じて数年かけて費用化します。しかしこの特例を使えば、取得年度に20万円全額を経費にできます。
そのため、利益が出ている年度に設備投資を行うことで、課税所得を圧縮する効果があります。資金繰りや節税対策の観点からも活用価値の高い制度といえるでしょう。
法人と個人で異なる手続き
法人の場合
法人が適用を受けるには、法人税の確定申告書に
・別表十六(七)
・適用額明細書
を添付する必要があります。特に別表十六(七)「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書」の添付漏れがあると、特例が認められない可能性があります。形式的な要件ですが非常に重要です。
個人事業主の場合
個人の場合は別表の提出はありません。その代わり、青色申告決算書の「減価償却費の計算」欄に必要事項を記載します。
・少額減価償却資産の取得価額の合計額
・特例を適用する旨
・明細を別途保管している旨
資産名は「少額減価償却資産」、償却方法は「少額」と記載するのが一般的です。明細書は提出不要ですが、税務調査に備えて必ず保存しておきます。
見落としやすい重要ポイント
① 償却資産税の対象になる
この特例を使うと帳簿上は固定資産計上しませんが、償却資産税の対象から除外されるわけではありません。
償却資産税は市町村が課税する固定資産税の一種で、毎年1月31日が申告期限です。帳簿に計上していないため申告漏れになりやすく、実務上もっとも多いミスの一つです。
② 300万円は「年間合計」
300万円の上限は1資産ごとではなく、年間の合計額です。期末に設備投資が集中すると上限を超える場合があります。超えた部分は通常の減価償却になります。
③ 事業専用割合に注意
自宅兼事務所などで使用する場合は、事業使用割合に応じて按分計算が必要です。100%事業用でない場合は、全額をそのまま経費にできるわけではありません。
まとめ
少額減価償却資産の特例は、中小企業や個人事業主にとって非常に使い勝手のよい制度です。取得年度に一括経費化できる点は大きなメリットですが、金額基準や年間上限、申告書への記載、償却資産税の対応など、実務上の留意点も多くあります。
制度を正しく理解し、取得時点から管理を徹底しておくことが、否認や申告漏れを防ぐポイントです。設備投資のタイミングを検討する際にも、この特例の活用を視野に入れておくとよいでしょう。

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